FEDECO Since 1967 ファースト電子開発株式会社
 ダイヤモンド社発行の しんきん経営情報10月号で紹介されました。シェア日本一の ニッチな企業 Vol. 6
シェア日本一の ニッチな企業 Vol.6 で 「無線とアナログ技術をコアに斬新な電子機器を次々と開発」と紹介いただきました。機器のデジタル化が進む中、誰も果たせなかった1000分の1秒誤差の計測をアナログ技術で実現。いまやファースト電子開発のタイム計測装置は、多くのスポーツ競技で欠かせない存在になっている。
全国の信用金庫の店頭で配布頂きました。
 
 
  経済ジャナリスト 森野進

無線とアナログ技術をコアに、斬新な電子機器を次々と開発 ファースト電子開発株式会社

 機器のデジタル化が進むなか、誰も果たせなかった1000分の1秒誤差の計測をアナログ技術で実現いまやファスト電子開発のタイム計測装置は多くのスポーツ競技で欠かせない存在になっている。

スイスの大手時計メーカータグ・ホイヤー社からの依頼で開発
  ファースト電子開発は社員数8人の小さな会社だ。しかし、その会社に大手電子機器メーカーの熱い視線が集まっている。開発の難しいアナログ電子機器を、発注先の手を煩わすこと無く次々と実現してくれるからだ。
 社長の伊藤義雄氏は若い頃からアマチュア無線の魅力にはまり、大学を卒業する頃には当時は未だ珍しかったマイクロ波の無線送信機を1から設計出来る程の技術を身につけたという。電機メーカーを経て1967年に同社を設立した。同社の強みは、電子機器のデジタル化が進むなか、無線というアナログ技術に特化することで自社の価値を高め、全ての受注案件に対して価格決定権を持つことだ。同社のビジネスはほとんどの場合、発注先からの「こんなもの作れないか」という悩み事の相談から始まる。受注が決まっても、発注先からもらうのは最終製品のイメージ図程度で、あとは同社が知恵とノウハウを駆使してかたちにする。営業部員はおらず、開発依頼はEメールで寄せられる。開発例は微弱な電波を探知して無線式盗聴器を発見する装置、JR東日本の新幹線のキップ売り場にある駅員呼び出し装置、セミナー会場で聴講者へ3~5択の質問を出し回答を瞬時に集計する無線集計機、介護用の無線通信装置、猟犬の位置を把握する装置など多岐にわたる。 なかでも最大のヒット作が「スポーツ競技用タイム計測装置」89年にスイスの時計メーカー、タグ・ホイヤー社から依頼を受けて開発した製品だ。スタート信号をゴール地点に無線送信し、コンで集計処理して、競技者ごとのタイムを計測・印刷するシステムである。

儲かるものでも、単なる下請け加工はやらない
  きっかけは、欧州のスキー連盟が競技用の無線タイム計測器を世界に公募したことだった。当時のタイム計測器は有線式だったため、設置が大変で無線化が切望されていた。タグ・ホイヤー社がそれに応募し、日本の総代理店を通じてファースト電子開発に依頼が舞い込み、開発を担当することになった。
 だが、この開発には計測誤差の極小化という難題があった。連盟側が求めてきた誤差の基準は1000分の5秒。つまり、スタート地点から発信された無線信号をゴール地点の受信機が読み取るまでの時間をこの範囲内に抑える必要があった。また、アルペンスキーのコースは全長2000~3000メートルで標高差が約100メートルあり、雪や風向き、気温などの気象条件も不安定だ。
 海外のライバルメーカーがデジタル方式で臨んだのに対し、もちろん同社はアナログ方式で対抗した。アナログではデジタルよりも信号の遅延が起こりにくく、「技術さえ有れば、電波の周波数の選択や感度調整などもやりやすい」と確信していたためである。約6ヶ月掛けて完成。誤差は1000分の1秒で、連盟の基準を軽くクリアするものだった。タイム計測装置は、現在では世界各国のスキー競技や陸上競技、動車レースなどの競技ほか、警視庁の白バイ隊競技などにも使われている。発売以来、タグ・ホイヤー社ブランドで国内外に4000以上が出荷され、世界市場の約7割を握ると推定されている。
 このように世界的にシェアの高い商品を手がけることもあるが、基本は「自分たちが作りたいものを作ること。たとえ儲かるものでも、単なる下請け仕事はやらない」と伊藤社長はきっぱり言う。
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